2010年4月24日土曜日

「せいかつ図鑑」すばらしく役立つ本です

見るともなく聞こえてきたテレビの中で「今の若い人は一人で食堂や喫茶店に入るのは恥ずかしい・・・学食も一人では嫌なのでトイレの中でパンをかじってすませる事があるそうだ。」と聞こえてきた。

私はまったく理解できなかった。
独立独歩という事を亭主から嫌という程、教育された私はどこへでも必要に応じて一人で、出向く事は当然の事と思っているので。

「新聞の記事の中でアメリカから輸入したいものがあるので、どういう手続きが必要か外務省へ行って調べて来い」と命じられて全く知らない外務省へ一人で行って来たのは24才の時。でも役所の場所が分か
つたし優しく教えてくれた。
売掛金でひっかかり提訴した時も法学士である夫は私に細かく教えて簡易裁判所へも私に出席させ自分は他人のような顔をして後で聞いていた。
勝訴して完了したが帰宅してから細かく良かった点・悪かった点を指摘された。そんな中で商売について教えられて来たので今こうして何とかやっていられるのかも分からないが。


さて、小学館発行の「せいかつの図鑑」
私は楽しく遊ぶ・学ぶとなっているので子供用かと思いながら開いてみた。
見開き頁から左右の手の指の名前が出ている。

この本を読む皆様へ
ちょうちょむすびはできますか?
ぞうきんしぼりはどうですか?
できなかったことができるようになったりだんだんじょうずになったりするとうれしいですね。

おうちのかたへ
この本を活用して子供の自立を支援しましょう。
現代は知恵や技を自然に体得するのが難しい状況です。
親子でとりくめば体験として心に残る子供の意欲を高める事でしょう。


「楽しく遊ぶ学ぶせいかつの図鑑」
小学館の子ども図鑑プレNEO
流田直/監修

出版社名 小学館
税込価格 2,940円

私はヨガ教室へ通っていますがヨガの中に足首雑巾しぼりというのがありますが、先生が「さあ、雑巾をしぼるようにぎゅっと絞って下さい」と声をかけても、どうして良いのか分からぬお嬢さんが時々いるんです。「雑巾しぼりって分かりません」
つまり彼女の家では電気掃除機とほうきと床はフローリングで掃除するので雑巾は使った事がないらしい。 掃除は雑巾なしではきれいになりませんね                                 
どの頁をひらいても、すぐ役立つように編集されています。
大人にも子供にも分かると思います。
洗濯の干し方ひとつでも人によって随分差のある事は知っています。
私は何十年来家事を他人の力に頼って生きてきたので、色々な人に出会い洗濯の仕方を見てきましたが、みな夫々異なります。
でもよく観察すると100点から30点位の差があります・

結び方の中でちょう結びをしようという頁があります・
プレゼントする時とか、一寸棚にものを飾る時、ちょう結びは必要ですね。
分かりやすく絵が出ています。(18~19P)


りぼんを結ぼう。
これもよく使われる技ですね。

靴や上履きの手入れ、又 服のしまい方もよく分かります。
縫うというところでは針の糸通しなど大変素晴らしいと思います。

次にひもを結ぼう。(P56~57)
たまむすび・かたむすび
どちらも日常必要です。
このかた結びについて私は子供の時、母から教わった結び方が今も非常に役立っています。
写真を見て下さい。



この結び方でやりますと、大人の力でどんなに引っ張っても解けません。
私は今もこれは重宝して使っています。

たべる所へ入りましょう。
コンビニでおにぎりは買うと思いますが、自分の家で三角むすびを作った事ありますか?
自分でにぎったのが一番美味しいものです。

P67にはおはしでしてはいけない事が並んでいます。
そしておはしの正しい持ち方(合理的な使い方)は写真をよく見て下さい。
あれ?僕ちょっとおかしいな?と思う人もいるでしょう。

料理も並べ方があります。
食べやすいように合理的に並べると絵のようになる訳です。


次は食べるものですが、今の日本はいつでも何でもあります。
私の妹が病気になって高熱でどうかなるかと思った時がありました。
何も欲しくないと云って息をハーハーさせているばかりの時ふと、すいかが欲しいというんです。妹はスイカが大好物です。冬の寒い、まっさかり。
すいかは売っている所がありません。
祖母が作りおきしてあったスイカ糖を少し湯でのばしてすいのみで飲ませました。
それを飲んでからスヤスヤ眠り翌日には少し熱も下がり医者も「もう大丈夫です」と云われ家族一同ホッとした事を思い出します。
70年前も昔の話です。

ところが今はどうでしょう。

春には、たけのこ・春キャベツ・ふき・そら豆・グリーンアスパラガス・イチゴ・さやえんどう

夏には、トマト・キュウリ・なす・ゴーヤ・えだ豆・メロン・すいか

秋には、さつまいも・さといも・しめじ・しいたけ・ぶどう・柿・なし

冬には白菜・春菊・ブロッコリー・大根・みかん

魚は別として(本には出ています)野菜。果物だけを並べてみても、これみんな一年中ありますね。
でも本当は春には芽生えたもの夏には身体の体温を下げるもの、秋には沢山の実りのものが、そして冬には身体を温めるものがきちんと自然界は作ってくれているのです。
今は温室栽培とか色々手を加えて季節も何もありません。

体の為には決して良い事ではなく、心の面でも季節の物を食べた方が情緒が安定いたします。
どんどん進化して行く事が人間にとって本当の幸かどうか考えてみたいと思いませんか。
この本には更に様々な項目で優しく詳しく書かれております。
お子様よりも平成人(昭和40年頃以降に生まれた人を指す)のみなさんにこの本を一冊手元においてほしいと思います。

面白い本です。

立派な本です。


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◎5/5(水)はお休みさせていただきます。


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2010年4月17日土曜日

横浜を東アジアのハブ港にするべきだ



「かながわの記憶」 
報道写真でたどる戦後史
神奈川新聞社 
創業120周年記念
神奈川新聞編集局/編・著


出版社名 神奈川新聞社
税込価格 2,625円
(上の画像お借りしました)



私は専門家ではないけれど横浜港が良好な港である事は歴史が示している。
又、本の配達を自転車でやってみると、やたら坂道が多くて大変だった事も横浜の地形は港に適した場所だったんだと推測できた。

私は昭和30年頃より横浜の住民になった。
当時は、万国橋埠頭(センターピアー)と大桟橋(サウスピア)それからノースピア(米軍が専用で使っていた)。
やがて山下埠頭が出来、広いなぁと思っていたが更に本牧埠頭、大黒埠頭、日産埠頭と次々に埠頭が出来て行った。
それまでは沖泊りという船があって、サンパンという小船で本船の下まで行き荷物を納品しなければならなくて、いくら若かったとは云え女の私には怖くて出来なかった。

サンパンの配達という大仕事であったのが、岸壁が次々出来て本船のすぐ側に車をつけられ、デッキまで上がっていく梯子(鉄の時も網梯子の時もあった)を登る作業だけになった。昭和30年代は横浜の頂点であった。
それから、半世紀いつのまにか徐々に徐々に着岸する船が減ってしまった。

毎年元旦、年が明けると同時に入港船からボーボーと汽笛が響いてくるのを私は55年間毎年必ず聞いた。それを聞くと「あぁ、新しい年になった」と気持ちがシャンとした。
ところが今年は24時を過ぎても聞こえてこない。
耳をすませてベランダからのけぞって聞こうとしたけど、聞こえなかった。
多分、入港船がほとんどいなかったのだとうと思う。

ここ2~3年入港船がぐんと減り岸壁は空きが多くなっている。
なぜだろう?
前から云われていた事だけど日本の港の係船料が高いと云う事らしい。
私は詳しい数字は分からないが。
そして今、日本船の乗組員は乗船交替の時はほとんど シンガポールまで飛行機で往復しているように見受けられる。又、荷物も釜山、中国の上海・香港あたりまで飛行機で送っているようだ。

日本は島国です。
資源はほとんど無し。
食料すら諸々の事情で輸入に頼っている。
いずれにしても、船で運ばれてくる物で日本人は生きていると云っても云いすぎではない。
なのになぜ直接、横浜・東京・神戸という良港があるにも関わらず他国の港に頼るのだろうか。
中国は景気のよさで荷動きはたしかにきは大きいと思うが、アメリカやヨーロッパに向かう船は日本の港から出航するのが一番合理的、設備も充分(と云えるかどうか私には分からないが)にあるにもかかわらず横浜・東京へ寄船する船は少なくなった

横浜は港町として栄え、港町として生きて来たはず。
その横浜から港や造船所を取ってしまったら何の価値もないとは云わないが、日本中どこにでもある街となんら変わらない。

それでは困る。
事業もそうだけど、街も特徴のない街はすたれて行く。
景気をよくする。日本の収支を健全にするという意味で事業が頑張るのは当然だけど頑張れるような政策を考えるのが国や県や市の仕事だろうと思う。
たしかに リーダーは大変だと思う。
しかしリーダーとしての社会的地位もそれなりにあると私は思っている。その点で何の理由か(ほぼ分かるけど)任期途中で市長をやめた中田氏には本当にガッカリを通り越して腹が立つ。 
横浜がケイ船コストが高いのならコストダウンして出来るだけ多くの船に立ち寄ってもらえるように考えるのが役所の仕事ではないんですか。

みなとみらい とみんな期待しているようだけど私はあそこは日産自動車の工場地になってしまうと思う。
街にはならないと思う。
街とは立派な店が沢山並んでも道路を奇麗にしても更に交通機関を引き込んでも本当の街は出来ません。

街とは買い物だけする所ではありません。

街とは美味しいものや食べ物を食べるだけの場所では足りません。

街とは人間のあたゆる慾望を満喫させなければ本当の魅力は出て来ないようになっています。

だから難しいんです。
どんなに素晴らしいデザイナーが、プランナーが頭で考えてもそれでは造りものしか出来ません。
造りものでは人間の満足は得れません。

例えば50年前の伊勢佐木町のように港に船が入り船からあがったら夕方を待って街に繰り出し、飲んで踊って、きちんと規律のある設備のある女性と楽しんで、初めて陸上(オカ)にあがった、日本へ帰ったという満足が得られたのです。
それは次の航海へのエネルギーの源泉になったのです。

家族もよく面会に来ていました。
妻に会う、子供に会う、何カ月ぶりかの顔を見てこれが又、次のエネルギー源になったのです。
横浜の港は優秀です。
せひぜひぜひ横浜の港を東アジアのハブ港に戻してほしいと私は切に切に思っています。

横浜から港をとったら皆無、何もありません。
港が「横浜」「YOKOHAMA」 ヨコハマ なんです。
東京のベットタウンにしないで下さい。

横浜市はウオーターフロントに投資すべきです。
他県ではしようにも出来ないこの海という港という財産をよく分かっていない人はリーダーの資格なしと私は思っています。

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今週のおすすめ













「横浜開港時代の人々」
紀田順一郎/著

出版社名 神奈川新聞社
税込価格 1,680円














「聞き書き横浜物語 
Yokohama story 
1945-1965」
松葉好市/語り 小田豊二/聞き書き

出版社名 ホーム社
税込価格 1,890円













「ヨコハマ伊勢佐木町復活への道
老舗商店街を甦らせる!」
山田泰造/著

出版社名 日本経済新聞出版社
税込価格 1,680円

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2010年4月10日土曜日

平成人の皆様、頑張るという事を実践して下さい

4~5日前だっただろうか。
フィリピンの日本郵船自営商船大学の今春4年生になる学生の海上実習が始まったというテレビがふと目に止まった。
日本郵船がフィリピンで商船大学を作った事は、その当時のニュースで私は知った。
ウェー。なんでフィリピンで、日本郵船なの・・・・・・。
それを知った私の心情は私の少ない語彙の中では表現出来ないほどの驚きだった。

私は20才代前半から50年余にわたって日本の海運業(特に本船の乗組員)と深い深い関係があった。
各船会社が乗組員厚生費として文化費を出すようになり、それはほとんど本の購入費になっていた。途中の過程は割愛するがイセザキ書房は昭和30年代・40年代は船で年商億単位の売上を上げていた。
春は南氷洋の捕鯨船、秋は北洋の鮭鱒船の出港する時には横須賀港へ2t車5台でも運び切れない本の量であった。

通常は毎日5台~9台の車(本棚つき移動販売車)を船の横につけて車に本船の方に入って来て頂き選書してもらった。東京湾いちえんが商売の場であった。
東京湾の大きな地図がを事務所に張ってNO、のついた針ピンを船として夫々の車の位置を店で把握していた。
又、本船の方が私の店にも来店された。スバルで迎えに行き伊勢佐木町の店で選んで頂き後から届けるとか。その間にお茶を飲みながら船乗り人生の様々な姿を話して頂いた。
私も本船にお邪魔して船の中の部屋の合理性に感心したり。

当時は様々な業者が船に入っていた。
保険屋さん、雑貨屋さん、衣類屋さん、etc・・・
長い経験から私は本船の方が来店されると、どこの船会社の方かすぐ分かった。百発百中。
不思議なもので、同じ仕事をしているけれど夫々会社のカラーが異なるんですね。
これはどこでも同じだけど。
船乗りさんの会社を当てるのは経験がなければ無理です。
あ、郵船さんだ、大阪商船さんだ、川崎汽船さんだ、山下新日本汽船さんだ・・・私はすぐ分かった。
そしてそれなりの応対をした。
その頃「港の本屋さん」というタイトルでNHKの正午のニュースのすぐあとで現場と店を両方放映していただいた。
あぁ、あの頃は私も若かった。
時代も若かった。希望がいっぱい溢れていた。
楽しい仕事だった。
当店の可愛い独身女性は3人本船の方と結婚した。
今も幸に暮らしているはず。

毎日入港する船の新聞(というより情報紙)の中に○○丸という船名ではなく、横文字の船名が混じりはじめた。
船籍を外国にして傭船して日本の船会社が運航する形になっていたらしい。

昔からマルシップというのは世界のどこへ行っても大手を振って行けたという事は私は前から知っていた。日本は四方海、海運業は命綱。
私の子供の頃は東京商船大学に合格したというと東大より褒め称えられたものだ。
又、船員さんが制服を着用して並んだ姿は美しかった。
船乗りに憧れる若い娘が沢山いた。
いつの頃からか、もう10年以上前だろうか。
船名は最上川丸(Kライン)はMOGAMIGAWAと書くようになった。
今はほとんど99%横文字になった。
私は時々埠頭へ出掛けた時、外国船の船員がデッキにもたれて何を見るともなく外を眺めている姿に、よく出会った。その時必ず思った。
(どこの国の人か、分からないけど国に残している妻や子供、恋人をしのんでいるのだろうと・・・)
船乗り稼業の哀愁を感じさせられた。
そのうち乗組員も外人が入ってきた。おそらくどの業界より先駆けて外人を雇用したのが海運界だと思う。昭和50年頃はそれでもキャプテンとか重要な地位の人は日本人で通常の乗組員だけが外人だった。
韓国人、中国人、インドネシア人と色々いたらしいが、フィリピン人に落ち着いたかにみえる。
聞けば、素直で明るくて音楽好きで、英語が堪能なので船の世界では良いはずだ。

その頃までは私も外人が乗船する事にさほど、心配はしなかった。
でも、船長、機関長というエライ人は日本人であってくれなければ困る。

そしてもうひとつは食事、これが問題。
「英語で書いた日本食」の本は必ず買って入れている。
でも、どんな味噌汁が出来るのかしら、どんなてんぷらが出来ているのかしら・・・・と私は時々思う。

そしてフィリピンへ、日本郵船が商船大学を作った。
当然といえば当然かも分からないけど、日本には商船大学はない。
東京海洋大学として日本にたった一つだけ。
これもあくまで海洋大学である。

他産業でも同様だけど技術者は国籍を問わず優秀な者がより優れた企業へ入るようになった。そう考えればグローバル化のこの時代、フィリピンに商船大学が出来た事に悲哀を感ずる私の方がおかしいのかも分からない。
そう心の中で思っても理性では、納得できるがマルシップの時代から半世紀あまりでこの現実は昭和人の私には胸にこたえるものが残るのは否めない。

こんな時代にもっと政府はしっかりしてほしい。
総理殿。
観桜会も悪くないけどもつと総理大臣らしい服装でTVに写されてほしいです。

このままいったら日本人は東海の小島の磯の白砂になつてしまいます。
日本人はすぐれたものを持っています。
リーダー次第で良くも悪くもなります。
出来ないかも、分からない事はやたら発表しないで下さい。
一寸横ヤリが入るとすぐ変わってしまうような政策では、国民は泣かされます。もう一度 陽を昇らせようではありませんか。

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今週のおすすめ















「脳で旅する日本のクオリア」
茂木健一郎/著

出版社名 小学館
税込価格 1,575円














「たんぽぽの日々 俵万智の子育て歌集」
俵万智/著 市橋織江/写真

出版社名 小学館
税込価格 1,680円














「赫奕たる反骨吉田茂」
工藤美代子/著

出版社名 日本経済新聞出版社
税込価格 1,995円

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2010年4月3日土曜日

夫よ イセザキ書房を守ってください

私がはじめて三浦半島に足をふみ入れたのは50年前だった。
見事な広い空があった。
白い しぶき をあげながら小船の動く青い海があった。
はだしになって走りたい砂浜があった。
瀬戸内生まれの私と異なり夫は、この光景が大変に気に入っていた。
あちこちに海水浴場用の小屋があり、カキ氷機がシャーシャーと音を立て、白い氷の上に赤や黄色の色がほどこされ裸の子供が目を輝かせて食べていた。
そんな素朴な素晴らしい海岸であった。

それから36年(私達夫婦の時間です)経って亡夫の墓を建てる時息子が云った。
「親父は三浦半島が好きだったんだ。三浦半島に建てよう」
そして三浦海岸公円墓地に決め妻と息子と嫁と孫2人の五人で平成5年に建立した。
以後毎年四回 お盆・正月 春と秋の彼岸前後に私は必ずお墓参りをする。
京浜急行で三浦海岸まで行き、そこからタクシーでお墓まで。タクシーを待たせておき、掃除をして花を捧げ線香をたく。
そして手を合わせ私は無心で亡夫のありし姿をひとつひとつあれこれ思い出しながら「イセザキ書房を守ってくださいね。好きな海が見えて貴方の好きな静かな所で良かったかしら」

たたかれた痛さも忘れ怒鳴られた怒声も、もう全く聞こえず静かな静かな墓の前で、ひたすら亡夫にあれこれと報告する。「書店業界は、とても難しい時期、あなたはどうすればいいと思う?」と声に出して話しかける。
聞いてもらえると信じて。

優しい夫ではなかったけれど私を鍛えようとして教育してくれた美しい思い出ばかりが思い出される。
息子も、もう50才過ぎ孫2人も成人した。
ここに亡夫が生きていたらどんなに喜んでくれただろうか。
でも、あれもこれもすべて運命。私に与えられた神からの定め。

行きも帰りも電車の中で読もうと思って持参した本を開かずじまいになった。
この京急沿線の開発の目覚ましい事、その風景を眺めるだけで、私は充分満足だった。
ここ10年前後に新築された新しい民家の美しい事。50年前にはじめて訪れた時の面影はない。こういう所に住むのもいいだろうなーと思ったりして。
ふと気がつくと丘というか山がけずられている平地にするためどんどん土地がくずされていく景色が見えた。すでに、段々になって丘の上の方にまで奇麗な住み家が並んでいるのに更にその上を崩そうとしている。
山でおくよりは住宅地にした方が価値は上がるだろう。
こうしてどんどん家を建てて需要があるのだろうか。
もし何か天災があったら、この斜面の住家もろとも崩れてしまうかも分からないのに。

そんな事を考えているうちに、横浜のみなとみらいにどんどん建つビルを思い出した。
みなとみらいは私にとっては(50年間船員さん達に本を買ってもらった者としては)街ではない。何年経っても三菱裏工横浜後船所の姿が頭から消えない。このドックから何百隻という商船が七つの海を目指して出港していった、あの壮観さを私は忘れる事が出来ない。そこに立ち会えた 喜びも私の誇り
に思っている。

年寄りの独り言と捨てないでほしい。歴史なんです、すべてが。

みなとみらいは元は海、街ではない。
そんな場所へあんなビルを建てていいのだろうか地盤は大丈夫なんだろうか。

ついでに云うならば東京の街。もうビルの建てすぎです。
建設業は景気浮揚の基本だからとても良い事だけどなにかあった時、あの東京の街は恐ろしい。もうこの辺でビル建設も考えてほしい。
そんな事考えているうちに黄金町駅に着いてしまった。
もう私の心は旅情をしのんでいる時間は終わり。

店へ帰ると私の大切な大切な本が私を待っていてくれた。紙芝居も踊っていた。

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今週のおすすめ















「日本建築様式史 カラー版」
増補新装
太田博太郎/監修 藤井恵介/監修
太田博太郎/〔ほか〕執筆

出版社名 美術出版社
税込価格 2,625円














「頭が10倍よくなる超睡眠脳の作り方」
苫米地英人/著

出版社名 宝島社
税込価格 1,300円



















「立ち読みでわかるイビキの本 
鼻呼吸が健康体をつくる」
パタカラシリーズ 1
秋広良昭/著 細川壮平/著

出版社名 三和書籍
税込価格 1,155円


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