2010年6月26日土曜日

生きがい

夢を見ていたのだろうか。
キセ子はうつらうつらしながら、ベットの上の60年前に、たった3年余の結婚生活で死別してしまった夫の写真を見上げてみた。
キセ子はその町一番の造り酒屋へ見合結婚をして嫁いで来た。
見合の時も、ただ俯いてばかりいたので労働で節くれだった両手を見るばかりで、顔はチラリと見ただけだった。
「男らしい人だな・・・・でも優しそうだな」と感じただけで。
あとは、造り酒屋の跡取り息子で、資産家の長男というだけしか分からなかった。
夫 浩太郎は大家の息子でどっしりとした感じは
したが、やさしそうなまなざしだった。
この結婚は一回の見合で成立した。
当時(70年前)は女は20才を過ぎると行き遅れと云われ両親は心忙しくなる時代だった。
浩太郎には二人の妹がいた。
いずれも未だ決まらず大きな家とはいえ同じ屋根の下で暮さねばならない。
次女はともかく長女はキツイ性格で結婚後も箸の上げ下ろしまで文句をつけられた。
サラリーマンの家庭でおっとり育ったキセ子はには驚く事ばかりだった。
更に義母は超ケンヤク家で不要な物は何一つ買わず嫁が何か買ってきても「いらないから返してこい」とよく云われた。
義父は一代を成した男だけに何かにつけて商売一筋キセ子の結婚にも必ず男の子を生んでくれ、男の子が生まれなかったら離婚すると云われた。
やがてキセ子は妊娠したが、男か女か分からない「女の子だったら、その赤ん坊を連れて帰って来い」と実家の両親は云うもののキセ子は何としても男の子を産みたかった。思いの他優しい浩太郎と夫婦として生きたいという愛情がだんだんにふくらんで来ていたのだ。
キセ子の願いかなって立派な男の子が生まれ義父は大喜び。
義母もヨカッタヨカッタと云っていた。
義妹二人はあちこちから縁談の話が出てきてやがて、親子三人で暮らせるようになる日をキセ子は夢に見ながら太一と名づけられた息子を一生懸命育てた。

時は流れて太一がやっと立ち上がれるようになった頃、思いがけぬ事が起きた。
浩太郎に招集令状が届いた。
「キセ子よ、太一を頼むぞ、必ず生きて帰ってくるから心配するな」とキセ子を大きな体で抱き寄せながら何度も何度も云ってくれた。
キセ子もその言葉を聞いているうちに暫くの間だから我慢しようと心に決めた。
当時は毎日のように召集兵を送る日の丸の小旗のかげで別離の悲しみの涙がとめどなく流された。
浩太郎は木更津へ入隊した。
木更津と云えば四国からは随分遠い所、途中高松まで送って行ったが別れの涙で前が見えなかった。
何も分からぬ太一をしっかり抱きしめて。
大きくなれよ、元気で待ってろよと何度も何度もくり返し、キセ子にも「心配するな、元気で帰ってくるよ」と自分も涙ぐみながら何度も云った

キセ子は毎日毎日色々な事を書いて手紙を出した。
浩太郎がいなくなると二人の妹も当たり方もキツく、太一、一人が生きがいだった。
「今日は太一はお乳を沢山飲んでくれました。配給の小麦粉でお菓子を作って食べさせたかったけど、義姉さん達が無駄な事するなと云われたので止めました。」
「太一はつかまり立ちが出来るようになりました。貴方に見せたいけど家には写真機もないし、お見せする事が出来なくて残念です。今度あなたと会う時には歩いているかも分かりません」
こういうハガキもすべて浩太郎が頼んでおいた木更津の旅館宛に発送した。
軍隊へは監察が厳しいのでこんな事、書けなかった。

ある日
電報が届いた。
二日間休みが出来たので面会に来てくれ

キセ子は飛び上がる程嬉しかった。
でもその旅費とか準備はどうすれば良いのだろうか。
実家の母に相談すると大阪にいるキセ子の兄が「俺がキセ子を木更津まで連れて行って商用を済ませてそれから連れて帰ってやる。」
という知らせが届きキセ子はほっとした。
義母は浩太郎の好物のアナゴのつけ焼きの入った巻きずし、魚の干物を甘辛く煮たもの等、沢山の食べ物を作ってくれた。
大阪の商人の兄のおかげでキセ子は安心して木更津まで無事行く事が出来た。
途中、東京で乗り換える時、ああこれが東京かとはじめてみる東京の空も珍しかった。
太一はキセ子の背中でどことなく喜々としていた。
分かるのだろうか、父親に会える事が。

でも太一には何も分からなかった。
母の背中でキョロキョロしたり眠ったり。

旅館へ着くなり大阪の兄は荷物をおくやいなや旅館へ心つげを渡し「宜しく頼む、明後日に迎えにくるから」と云って旅館を出た。
やっとやっと親子三人になった。
「太一よ、お父さんだよ」と云って、扇子をもった手を太一の方へ向けようすると、その扇子の先だけ一寸触り父の顔をただ不思議げに観ているだけだった。
太一が父とゆっくり会ったのはこの時が
最後であったのに。そんな事は父も母も本人も全く想像もしなかった。

浩太郎が「少し町を歩いてみるか、何も売ってる店もないけどあの田んぼの方へでも行ってみるか」と云って義母の手作りの巻きずしを少し持って太一を背中に背負いキセ子は旅館に「散歩にいってまいります。」と挨拶して出掛けた。
木更津は大きな町ではないので、あちこちに田畑が残り、空の色も澄んでいてとても奇麗だった。
キセ子は思った。
「私は誰にも干渉されず みられず夫とこうして肩を並べて歩いている、こんな事は結婚以来一度もなかった。いつも後ろから横から他人の目が光っていたのに。今のこれを幸というんだろうか」
その思い出はキセ子の90年間の歴史の中で唯一つの夫婦としての本当に心の通った美しい、そして悲しい思い出であった。

浩太郎はあんなに約束したけれど、ニューギニアの沖で海中のもくずとなって戦死した。
昭和20年6月のこと。、以後キセ子は再婚もせず、太一を心の頼りとして生きてきた。
90年という長い人生の中でたった一度だけの夫婦らしい光景はキセ子の心の中にしっかりと根付いていた。

ふと目が覚めると、この日の夢を何度見た事か。
女性として、幸ではなかったかも分からないがキセ子は太一という頭のよい息子が東大を卒業して大蔵省に入った時、仏の前でさめざめと泣いた。
「やっとやっと私の役目が終わりました浩太郎さん、これからは太一を助けてやって下さい」と。



○今週のおすすめ○
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「JAL崩壊 ある客室乗務員の告白」
文春新書
日本航空・グループ2010/著

出版社名 文芸春秋
税込価格 777円
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「学問」
山田詠美/著

出版社名 新潮社
税込価格 1,575円
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「論戦 2010」
日本を愛すればこそ、警鐘を鳴らす
櫻井よしこ/著

出版社名 ダイヤモンド社
税込価格 1,500円
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「漢方養生術 “漢方”入門書の決定版!」
週刊朝日MOOK 漢方 2010

出版社名 朝日新聞出版
税込価格 780円


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2010年6月19日土曜日

日本人としての勇気と誇りを

一大ベストセラーになった「国家の品格」の著者、藤原正彦氏が文芸春秋7月号に「日本の国民に告ぐ」という一文を出しております。
先ず。これを読んでいただくのが一番よく分かり手っ取り早いと思います。

私は政治には全く関係なく唯ひたすら55年間””を売って来ただけの人間です。
その私が最近思う事は日本人が(他国の事は私は不勉強)バラバラになってしまったように思えてなりません。
親と子、兄弟の間柄、親戚と云っても必要な時は会うけれど普段はみんな、一人一人別々の時代になってきたように思います。
敗戦後、民主主義の時代になってから「個」を大切にする世の中になりました。悪い事でも良い事でもないと思います。
そういう時の流れになったという事です。
「この国の直面する問題は互いに関連し絡み合った糸玉のようになっていて誰もほぐせないでいる。部分的にほぐしたように見えても一時的なものに止まり全体の絡みには何の影響も及ばさない。足が痛い、頭が痛い、手が痛いという箇所的なものではなく全身症状である体質の変化によるものである。」と書かれています。
又、「万人が自由に自分の利益が最大になるように死に物狂いに競争しどんな規制も加えないですべてを市場にまかす。
どんなに格差が生まれ社会が不幸になろうとそれは個人の能力に差があるので当然の事だ・・・・というのは日本のものではない日本人が平等を好むのは自分一人だけが、いかに裕福になろうと周囲の者が貧しかったら決して幸を感じる事が出来ないからだ」
そして更に「今こそ日本は祖国への誇りを取り戻し祖国の育んできた輝かしい価値観を再認識する必要がある。座標軸を戻すのだ」
「過去と断絶」「誇りを」を回復せよ。と強調されています。
是非みなさんに、文芸春秋7月号を読んで頂きたく思います。

私の感ずる所20代・30代・40代の人が本を読まない、文章を書かない世代だと思います。とり戻すには、もう私の人生の時間が足りません。
そこで私は10代以下の子供さん達に期待を抱き、彼ら彼女らに日本人としての誇りを持ってもらうには、歴史、文学、数学あらゆる本を読み理解してもらい夫々が自分自身の日本人としての血を養ってほしいと切望します。

そんな事から始めたのが紙芝居です。
紙芝居は子供だけのものではありません。
大人も一緒になって演じたり演じられたりしてほしいと思います。

一例として「平和の紙芝居」をご紹介します。
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「二度と」
脚本・絵○松井エイコ
写真○小川虎彦他 12場面
1945年8月、世界初の原子爆弾が広島と長崎に落とされ、人も動物も何もかも命を失った。もう二度と原爆を落とさないで!
定価1680円(本体1600円+税5%)
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「のばら」
原作○小川未明
脚本○堀尾青史
絵○桜井誠 12場面
二つの国の国境をそれぞれ守っている年寄りと若者の兵隊はふとしたことで仲良くなった。戦争が起きて敵同士になった二人は・・・・・
定価1680円(本体1600円+税5%)
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「平和のちかい」
原作○稲庭桂子
絵○佐藤忠良
1945年8月6日、世界で初めての原子爆弾が広島市に落とされた。25万人以上の犠牲者の中、子供達の体験から平和への祈りを語る。
定価1995円(本体1900円+税5%)
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更に「愛と平和シリーズ」
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「あおよかえってこい」
脚本○早乙女勝元
画○木村正志 12場面
太平洋戦争の末期、ぼくのともだちのけんちゃんの家にあおという馬がいた。三月十日の大空襲の日、ぼくとあおは炎につつまれ・・・・
定価1680円(本体1600円+税5%)
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「かわいそうなぞう」
脚本○土家由岐雄
画○久保雅勇 12場面
太平洋戦争の末期。東京の町は毎日のように空襲を受けていました。もし、上野動物園は襲撃されてゾウが暴れ出したら大変と・・・・・・
定価1680円(本体1600円+税5%)
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「トビウオのぼうやはびょうきです」
脚本○いぬいみこと
画○津田櫓冬 12場面
南の海にトビウオの親子がいました。ある日遠くの空がまっかにそまり、水がグラッとゆれ、おそろしい音がひびいてきました。
定価1680円(本体1600円+税5%)
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昔からの名作も沢山あります。
たかが紙芝居と云わないで下さい。
演じ方によっては充分立派な一冊の書籍に匹敵する内容を得る事が出来ます。
私共イセザキ書房は紙芝居においては日本一の在庫を持っています。
又、夫々私は折を見て声に出して読んでおります。
小説を書くより難しいと思います。

人間10才までに体も心もその基礎が完成します。
日本人としての誇りある精神と優秀な血を子供に伝えてほしいと切願します。

◆紙芝居のご案内◆

幼・保用
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「あかちゃんがあっあっ」
脚本/絵○とよたかずひこ 8場面
あかちゃんが「あっあっあ」しょうぼうしゃを指差しているよ。あかちゃんがしょうぼうしゃにのっているよ。どこにいくのかな
定価1470円(本体1400円+税5%
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「どろんこおばけ」 8場面
脚本/絵○ひろかわさえこ
あれあれ?どろんこおいけに、どろんこおばけがいるよ!さぁ、おみずをかけてあげましょう!おばけのしょうたいは、なんだろう?
定価1470円(本体1400円+税5%
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「まんまる まんまる まんまるな」 8場面
脚本/絵○長野ヒデ子
リズミカルな言葉とともにおだんごを食べたり、ボールで遊んだり・・・。おかあさんにだっこされてうれしいな。暖かさあふれるかみしばい。
定価1470円(本体1400円+税5%
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「こんにちわ」 8場面
脚本○内田麒太郎
絵○山本祐司
お母さんの後ろにかくれているのは、だれかな?
「こんにちわ あこちゃん」。いろんなお友達と「こんにちわ」。仲良しになる紙芝居。
定価1470円(本体1400円+税5%)
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「できたかな まーだかな」 8場面
脚本○やすいすえこ
絵○つちだはるよし
じゅうじゅう、ことこと、しゅうしゅう、できたかな、まーだかな。きっとできたよ。きっとできたよ。ハンバーグ、スープにむしパン。めしあがれ。
定価1470円(本体1400円+税5%)
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「ぴよぴよ ひよちゃん」
脚本○すどうあさえ
絵○前田マリ 8場面
ひよこのぴよちゃん、どこいくの?ぴよぴよ、ぴよぴよママのとこ。ガタゴトみちよ、ぷにょんぷにょんにみちがあるよ。だいじょぶかな?
定価1470円(本体1400円+税5%)
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「おんぶ おんぶ」
脚本○武鹿悦子
絵○相野谷由起
おーんぶおんぶ、ばったさん、かえるさん、かめさんがおんぶ。おんぶのあとはぴょーん、すいすい、そしてねむねむ、くーすーっ。
定価1470円(本体1400円+税5%)
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幼・保・小低用
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「おやつのまえに」
脚本○高橋道子
絵○いそけんじ
どろんこあそび中におやつとよばれたさるとねことあらいぐまは、どうするでしょう。さるくんはきたない手のままで・・・。
定価1470円(本体1400円+税5%)
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「ばいきん バイバイ!」
脚本/絵○仲川道子
けんちゃんがつみきで遊ぶとつみきバイキン、ねんどで遊ぶとねんどちバイキンと、どんどんバイキンが手についてしまいます。
定価1995円(本体1900円+税5%)
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2010年6月11日金曜日

紙芝居を買って下さい。どこよりも在庫豊富です。

私は妹が生まれた3才の時から祖母の寝床の中でだかれて眠った。
祖母は私が眠るまでおとぎ話をきかせてくれた。
絵本を読むのではなくすべて祖母の語りである。
桃太郎やサルカニ合戦も面白かったけど「山賊の話」が一番おもしろく、70年余たった今も私はおぼえている。

四国から東京へ出るのに東海道と中仙道があったが、きっと中仙道の方がコストが安かったのかも分からない。
宿屋らしき所に泊って身ぐるみはがれてしまう事もあったらしいが、そこをこの話の主人公の夫婦は察知して、出された食事を全部窓からその下を流れている小川へ捨ててしまい、持物はすべて頭の上にくくりつけ下半身裸になって、川の中を夜中にひっそりと音を立てず宿から抜け出す。
暫くすると宿の主人に気づかれて追手があちこちからやってくる。夜の事だからあちこちの暗い所へかくれながら夜明けまでに逃げ切る話だけど、これは本にもない。経験者から聞いた話を祖母が私に語ってくれた話。
でも間違う事なく祖母は恐しい所はさも恐しそうに、抜け出す時は声をひそめたりして、その場その場の姿がまるで見えるように話してくれた。
「山賊の話して」とよくリクエストしたものだ。
今、私はおばあさんだけど、今の孫はそんな眠りながらの話など聞いてくれない。
又、抱かれて寝るのではなく、みんな一人一人独立したベッドで眠るので、そんなチャンスもあまりない。

でも、3、4才~5、6才位の時に聞いたお話、観た紙芝居、読んだ絵本は一生忘れない。
小学校に入れば学校の勉強もあるけれど、本を読む楽しみが大きくふくらんでくる。
この時期をパッチリとらへて子供に本を与へると、本を読むという習慣が身について特別な事でなく読書のよろこびの中にすーっと入っていける。
私は小学校の時同じ漢字をノート2頁にびっしり書く宿題が毎日あった。それを書かないと何か気になって他の事が出来ないので、帰宅するなりすぐに書いたのを覚えている。
小学5年・6年と同じ教師に教わったが、その女教師は国語の時間にとても力を入れて、教科書にない小説をよく読んでくれた。今考へるとあの2年間に、宮本武蔵に出てくるお通さんは美しくやさしいすてきな女性として、私の身体の中で育って行ったと思う。
もうその先生は亡くなられたが、体育はダメだったけど国語はよく教へてくれたと思う。作文を毎日書かされて、その中からよい作品はみんなの前で朗読させられて、みんな競い合って作文に励んだ。

今の学校教育はどんなものか遠く離れてしまってよく分からないけれど、今の社会人(特に若い人)は本当に字を書かないと云うばかりでなく、文章を書かない。
文章など書かなくても不自由しない、それに勝る道具が沢山ある、と云われれば私は反論できないけれど。
文章を書くという事は唯文章を書くだけでなく思考の整理が出来、社会人としての矜持が養はれると私は考えている。

私は今、書店という商売をやっている。
儲からない商売だけど私の唯一の心のよりどころは、日本人が日本人としての普通の読む・書くが出来るようになってくれる事、その唯一すじ道を歩み続けて行く事だ。
読みきかせをやってみたけど疲れる。
何かいい方法はないものかと考えて到達したのが紙芝居であった。
演じる楽しみも覚えた今、
『人間はどんなに年令を重ねても希望を持たなきゃ、この年寄りの私が恋をするかも分からない、事業を起すかも分からない、人間は希望を持たねば』
このコマーシャルに励まされて、生あるかぎり夢を持とう。


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紙芝居の在庫はどこよりも豊富に取り揃えております。
イセザキ書房オンラインショップ でもご購入頂けますので、是非ご利用下さい。
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2010年6月5日土曜日

海のように広い心で


空は青く晴れ、海も静かにゆるやかに動いている。
海は大好き。

60余年前に父は比島でのたれ死んだ。 父の仇を打とうとすればヤイバの向け方が分からない。

祖父母も長寿を全うして亡くなった。 いずれもその時お別れに行けなかった。 夫が「行くな」の一言で私はたじろいてしまった。

何も分からない私に世の中を教えてくれたWさんも亡くなった。 「商人は景気の良い時に欲しい物は買っておくべきよ、不景気になったら何も買えないんだから」 その通りだった。

発想の泉のようにわいて来る人だったTさんも、するだけの事をして旅立って行った。 本人は満足
だったかも分からないが私は淋しい。


そして夫も逝った。 厳しい厳しい夫にひたすら仕えた。 それが私の勉強だと信じて。 本を読め、これが厳しい夫の命令だった。

そして私は「めげちゃ駄目ですよ」と励ましの言葉に支えられて今日も店に立つ。 働く事が私を支えているのかの如く。 私は人生の終わるまで果てしなき夢を抱く。 海のように広い心で。

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我が家でミニ野菜をつくる1
ミニトマト
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出版社名 講談社
税込価格 1,500円
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我が家でミニ野菜をつくる2
ミニニンジン
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出版社名 講談社
税込価格 1,500円
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